設立趣旨
私たちはこれまで、「トラウマインフォームドケアを学ぶ」研修会や研究会を通じて、各地域の医療・福祉・教育・司法など多様な現場における、トラウマへの理解と対応力の向上に取り組んできました。近年、災害や虐待、家庭内暴力、性暴力、いじめ、医療現場における二次受傷、さらにはパンデミックや社会的孤立といった要因による心身への影響が、個人・家族・地域社会に深刻な影響を及ぼしていることが明らかになっています。これらの問題に対して、単なる知識や技術の習得ではなく、組織や社会全体がトラウマの影響を理解し、それを前提とした関わりを行う「トラウマインフォームドケア(TIC)」の視点が、今まさに求められています。
現場では、実践者が日々多様な困難に直面しています。支援者自身もトラウマを経験する可能性があり、燃え尽きや二次外傷性ストレスに苦しむケースも少なくありません。こうした現状を踏まえると、実践者が孤立せず、安心して学び続け、互いに支え合う場を持つことが不可欠です。また、TICの概念やエビデンスは海外では進展している一方、日本における体系的な研究や実装はまだ途上にあります。理論研究と現場実践の架け橋となる「継続的・双方向的な学びのコミュニティ」が切実に求められています。
このような背景から、私たちは2025年、「トラウマインフォームドケア研究会2025 in Ishikawa」を契機に、全国規模の専門的ネットワークとして「トラウマインフォームドケア学会(仮称)」を設立することを志しています。本学会は、医療従事者、福祉職、教育関係者、司法関係者、行政担当者、研究者、当事者・家族など多様な立場の人々が協働し、トラウマに関する実践と研究の質を高めることを目的とします。
具体的な活動としては、年次学術集会やシンポジウム、研究発表の場の提供、ワークショップや研修の開催、実践事例の共有、国内外の研究成果の紹介、ガイドラインや政策提言の作成などを予定しています。また、学会員がつながり、互いに相談できるオンラインプラットフォームを整備し、地域や分野を超えた協働を推進していきます。これらの取り組みを通じて、学術的根拠に基づく支援の普及と、地域社会に根差した連携の構築を進め、誰もが安全で尊重される環境の実現に寄与します。
私たちは、この学会が単なる研究者の集まりではなく、現場の声を生かし、支援者も当事者も共に学び合える実践的なコミュニティとなることを目指します。TICの理念が社会全体に広がることで、トラウマを抱えながら生きる人々が孤立せず、尊厳をもって回復していける社会の実現に貢献したいと考えています。
この趣旨にご賛同くださる皆さまには、ぜひ設立メンバーとしてのご参加、活動へのご協力をお願い申し上げます。私たちと共に、未来の支援のあり方を創り出す歩みに加わっていただければ幸いです。
2026年1月
トラウマインフォームドケア研究会一同
シンボルデザイン

【シンボルデザインの説明】
日本トラウマインフォームドケア学会のシンボルデザインは,トラウマインフォームドケアの核心となる4つの理念を視覚的に表現しています。
まず,基調となる「円」は,すべての基盤である「安全」を象徴しています。しかし,その円は閉じられることなく,あえて「開き」を持たせています。これは,当事者の「選択」が尊重され,決して強制されない対等な関係性であることを意味しています。
また,図形の「重なり」は,多職種協働・連携し,学問の枠を超えて協力し合う「学際性」を表現しています。この円が完全な形を成さず,「円になりきらない」姿をとどめているのは,「回復は決して終わりではなく,常に進行形である」という,希望を込めたメッセージが反映されています。
発起人名簿
(準備中)
役員名簿
代表理事 一ノ山 隆司(金城大学)
副代表理事 上田 智之(九州看護福祉大学)
副代表理事 片山 典子(湘南医療大学)
理 事 伊藤 桂子(東邦大学)
理 事 上野 栄一(宝塚医療大学)
理 事 大西 恵 (こころの相談室 道へ)
理 事 小島 瞳 (松原病院)
理 事 境 美砂子 (金城大学)
監 事